(オウナ視点)
響く轟音。身体を貫く程の音の質量。
家の中にいてもわかるほどのすごい大きな音。家そのものが揺れたと感じるほど。
「オウナ!準備を頼む!」
外にいた翁の声だ。
もう姿は見えない。
よほどの緊急事態なのだろう。
無理もない、あの轟音だ。
貨物便の音は何度が聞いたことがあるけど、あんな凄まじい音ではなかったはず…。
今回はいったい何が…?
翁は準備をしろと言っていた。
まさか月の民が到着したの?
疑う余地はない、あの翁が言うのであればそうなのだろう。
あの音で果たして無事なのだろうか?
考えるな、私がすることはひとつ。
月の民を受け入れるための準備だ。
ーーー
「急げ!慎重に運べ!」
そう時間がたたないうちに、家の外から緊迫した翁の声が聞こえてきた。
月の民がきたのだろう。
弱音は吐いていられない。
私がやるしかない。
ーーー
まもなく月の民が運ばれてきた。
見て驚いた。
運ばれてきたのは女性で、さらに想像していたよりはるかに若い。
なぜ、こんな子が?
血と煤と土にまみれ、呼吸も荒く、脈も安定していない。
予断を許さない。
幸いなのは、まだ生きていて手足がちゃんとついていることだろうか。
翁を看病したときの状態とは比べ物にならないほど悪い。
翁いわく貨物用のカプセルで来たようだ。
あんもので…?人が乗れるようなものでは無かったはず…。
月からの貨物は翁はガラクタばっかりだと言う。そのガラクタさえも輸送の途中で壊れていて、使い物にならないという。
そんなもので人を送ってきたの…?
月のことは、翁に聞いた話でしか知らない。
だけど、はっきり言えるのは、翁をあんな目に合わせた月が私は嫌いだと言うこと。
あの轟音だ。
かなりの衝撃がこの子にかかったのだろう。
それとあんなものに詰められて、気が遠くなるような長い時間を過ごしたのかな。考えるだけでつらくなる。
迷ってはいられない。
私がこの子を助けるんだ。
絶対に死なせたくない!

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