『かぐやは月には帰れない』◆第15話 目を覚ましたかぐや

(かぐや視点)

どれくらい闇をさまよっていたのだろう。

自分が生きているのか、死んでいるのかもわからない。

漂っているのか、沈んでいるのか。

どこへ向かえばいいのかも、もう思い出せなかった。

それでも——

私を繋ぎ止める“何か”があった。

右手に感じる、あたたかい温もり。

これはなんだろう。

こんな温かさ、今まで感じたことがない。

月の人は、誰も私に触れたがらなかった。

これが何なのか、確かめたい。

そう思った瞬間、空気の音が聞こえ始めた。

目が覚めた。

見たことのない天井。

石のように重い身体。

湿った空気。

薄暗い部屋。

そして右手に残る、あの温もり。

うっすら見える、敵意のない女性。

あぁ……私、何をしていたんだっけ。

ここはどこだろう。

私は何をしなきゃいけなかったんだろう。

でも、そんなことが考えられなくなるくらい——

その温もりは、あまりにも優しかった。

「おはよう。身体はどう?」

女性の声。

とても優しい声。

よくわからないけれど、涙が出た。

声はほとんど出なかったけど、涙だけは止まらなかった。

気づけば、わんわん泣いていた。

月では泣いたことなんて一度もなかったのに。

涙は止まらず、耳まで伝っていく。

涙でほとんど見えないけれど——

私の手を握るこの優しい女性も、一緒に泣いていた。

どうしてこの人は泣いているんだろう。

私のために泣いてくれる人なんて、月にはいなかったのに。

理由はわからない。

でもきっと、とても優しい涙。

それだけはわかる。

その女性は、私の胸に沿うように寄り添って泣いてくれた。

理由はわからない。

でも——

この人は優しい。

それだけは、はっきりわかった。

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