✨『銀河鉄道の夜は終わらない』 第16章インファの黒魔術は終わらない
インファの悩み、静かに狂って静かに可愛い
デブネルの騒がしいやり取りが終わり、
車内にまた静けさが戻った。
その静けさの中で、
小さく、小さく、手が上がった。
インファ
「……あの……ぼく……も……」
ガリバー
「お、インファ。話すか?」
ミヤビ
「無理に話さなくていいのよ?」
インファ
「……いえ……。
みんな……話してたから……
ぼくも……少しだけ……」
デブネル
「インファの悩みって……黒魔術の呪文が覚えられないとか?」
インファ
「……そんなこと……ないです……!」
ミヤビ
「デブネル、黙りなさい。」
インファは胸の前で手をぎゅっと握りしめた。
その目はどこか遠くを見ている。
インファ
「……ぼく……
学校……行けてなくて……
それは……まあ……いつものことなんですけど……」
ガリバー
「“いつものこと”なんだな。」
インファ
「……はい……
でも……最近……もっと……やばくて……」
ミヤビ
「やばい?」
インファ
「……ぼく……黒魔術ブログ……やってて……」
デブネル
「ブログやってたの!?黒魔術の!?」
インファ
「……はい……
“闇の深淵に触れし者の記録”っていう……」
ガリバー
「タイトルがもうやべぇ。」
インファ
「……それが……
界隈で……すごく……バズってて……
アクセス……毎日……一万……くらい……」
デブネル
「一万!?ぼくのブログ三人だよ!?(家族)」
インファ
「……で……
熱心なファンの人が……
“オフ会を開きたい”って……
毎日……メールしてきて……」
ガリバー
「オフ会!?お前が主役で!?」
インファ
「……はい……
学校も行けてないのに……
オフ会なんて……
ぼく……死ぬ……」
ミヤビ
「いや、それは確かに無理ね。」
インファ
「……“闇の導師インファ様に会いたい”って……
ぼく……導師じゃない……
ただの……引きこもり……」
デブネル
「ギャップがすごい!」
インファ
「……それだけじゃなくて……
学校に……
ぼくに……やたら話しかけてくる女子がいて……」
ガリバー
「お?いじめか?」
インファ
「……ぼくも……そう思って……
怖くて……
ずっと……避けてて……」
ミヤビ
「どんな感じで話しかけてくるの?」
インファ
「……“今日も髪きれいだね”とか……
“インファくんって静かで落ち着くよね”とか……
“また話したいな”とか……
“LINE交換しよ?”とか……」
デブネル
「それ完全に好意じゃん!!」
ガリバー
「お前……モテてんぞ。」
インファ
「……ぼく……が……?」
ミヤビ
「あなた、優しいし聞き上手だし、
静かで落ち着いてるから、女子からしたら安心するのよ。」
マッド
「ワシも安心する。」
ガリバー
「先生は黙ってろ。」
インファ
「……ぼく……
オフ会も……女子も……
どうしたら……」
ガリバー
「どうもしなくていいよ。
オフ会は断れ。
女子は……まあ……様子見ろ。」
ミヤビ
「……って言いたいところだけど、」
デブネル
「いや、インファのオフ会……見たくない?」
ガリバー
「……見たい。」
ミヤビ
「見たいわね。」
マッド
「ワシは司会をやろう!」
インファ
「……え……?
ぼく……断るって……」
ガリバー
「いや、断らせねぇよ。」
インファ
「えっ」
デブネル
「だってさ!
界隈でバズってる黒魔術ブログの主が、
オフ会やらないなんて逆に失礼だよ!」
ミヤビ
「ファンはあなたに会いたいのよ?
あなたの“闇の導師感”に惚れてるのよ?」
インファ
「ぼく……導師じゃ……ない……」
ガリバー
「いいんだよ、導師で。今日から導師だ。」
マッド
「ワシの白衣貸してやろう。導師感が増すぞ。」
インファ
「白衣で黒魔術……?」
デブネル
「逆に新しいよ!」
インファ
「……ぼく……死ぬ……」
ガリバー
「死なねぇよ。
むしろお前、
“リアルで人に求められてる”ってことだぞ?」
インファ
「……求め……られてる……?」
ミヤビ
「そうよ。
学校の女子だって、あなたに話しかけてるんでしょ?」
インファ
「……はい……
でも……いじめ……じゃ……」
デブネル
「いやいやいや!
“髪きれいだね”
“落ち着くよね”
“LINE交換しよ?”
これ全部、好意だから!」
ガリバー
「お前、普通にモテてるんだよ。」
インファ
「……ぼく……が……?」
ミヤビ
「あなた、優しいし聞き上手だし、
静かで落ち着いてるから、女子からしたら安心するのよ。」
マッド
「ワシも安心する。」
ガリバー
「先生は黙ってろ。」
インファ
「……ぼく……
どうしたら……」
ガリバー
「全部やれ。」
インファ
「えっ」
デブネル
「オフ会は開催!
女子には優しく対応!
黒魔術ブログは継続更新!」
ミヤビ
「あなたならできるわよ。
むしろ今が人生の転換期よ。」
マッド
「ワシの科学室でリハーサルしてもええぞ!」
インファ
「……みんな……
なんで……そんなに……
ぼくを……」
ガリバー
「応援してんだよ。
お前がやれば絶対面白いから。」
デブネル
「ぼくはオフ会の受付やるね!」
ミヤビ
「私は写真撮るわ。」
マッド
「ワシは司会じゃ!」
インファ
「……ぼく……
そんな……
みんなが……
そこまで……
言うなら……」
ガリバー
「言うぞ。」
デブネル
「言うよ!」
ミヤビ
「言うわよ。」
マッド
「言うとも!」
インファ
「……じゃあ……
ぼく……
オフ会……
やります……!」
ガリバー
「よっしゃああああ!!」
デブネル
「導師インファ誕生!!」
ミヤビ
「女子への対応は後で練習しましょう。」
マッド
「まずは名刺を作るんじゃ!」
インファ
「……ぼく……
なんか……
すごく……
やる気……出てきました……!」
ガリバー
「それでいいんだよ。」
—
インファの胸の奥で、
黒くて重かった何かが、
少しだけ光に変わった。
列車はまた、
勢いよく走り続ける。


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