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✨【第5章】嵐と絶望と生活感
山賊Cを背負ったまま走っていたら、
空が急に暗くなった。
「おいメロス、なんか雲やばくね?」
山賊Aが空を指さす。
見上げた瞬間、俺は悟った。
――あ、これ来るやつだ。
次の瞬間、空が本気を出した。
雨というより、もはや“空からのバケツ攻撃”。
「うわあああああああ!!」
山賊Cが背中で叫ぶ。
叫ぶな、揺れる。
道は一瞬で川になった。
川は一瞬で地獄になった。
俺は必死に足を動かしたが、
水の勢いで前に進まない。
「メロス!どうするんだよ!」
山賊Bが叫ぶ。
どうするもこうするも、
俺が聞きたい。
嵐の中で、俺の脳内会議が始まった。
(妹の結婚式……絶対間に合わない……
セリヌンティウス……死ぬ……
山賊C……重い……
俺……なんでこんな人生……)
山賊Aが叫ぶ。
「メロス!お前、泣いてねぇか!?」
泣いてるよ。
雨でバレてないだけだよ。
俺は叫んだ。
「お前ら!ここで別れよう!
俺1人の方が早い!」
山賊Bが驚いた顔をした。
「え!?俺たち置いてくのか!?」
「いや、置いてくっていうか……
お前ら、普通に足手まといなんだよ!!」
山賊Cが背中で泣き始めた。
「ひどい……兄貴……」
兄貴じゃない。
でも、俺は本気だった。
「セリヌンティウスが死ぬんだよ!
妹の結婚式もあるんだよ!
お前らの怪我で時間ロスしてる場合じゃないんだよ!!」
山賊AとBは顔を見合わせた。
「……メロス、行けよ」
「俺たちはここで雨宿りする。
お前は走れ。
友を助けて、妹の結婚式に行け」
急にいいやつらになるな。
俺は山賊Cをそっと地面に降ろした。
「悪いな……」
山賊Cは涙目で言った。
「兄貴……結婚式、楽しんでこいよ……」
いや、来るな。
俺は深呼吸して、嵐の中へ踏み出した。
足は重い。
心も重い。
でも、走るしかなかった。
「うおおおおおおおおお!!
間に合ええええええええ!!」
嵐の中で叫ぶ俺の声は、
雨に消えていった。
でも、その叫びだけは、
確かに俺の中で燃えていた。
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