朝日が昇る前、俺は村を出た。
理由は……まあ、勢いだ。
昨日、村の酒場で「王様が人を信じないらしい」と聞いて、
酔った勢いで「じゃあ俺が説得してくるわ!」と言ってしまった。
翌朝、冷静になった俺は思った。
――いや、なんでそんなこと言った?
でも言ってしまったものは仕方ない。
村のやつらも「メロス、頑張れよ」とか言ってくるし、
今さら「やっぱやめます」とは言えない空気になっていた。
荷物はほぼゼロ。
準備もゼロ。
計画性もゼロ。
あるのは昨日の勢いだけ。
でも、こういう“勢いだけの旅立ち”って、
人生で一番ドラマが始まる瞬間なんだよね。
村の出口で深呼吸した。
朝の空気が冷たい。
俺の頭も冷たい。二日酔いだ。
「よし、行くか」
その一歩が、全部を変えることになるなんて、
この時の俺はまだ知らない。
いや、知らないままでいたかった気もする。
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