舞踏会?知らん。まずこの家が終わってる。
義母と義姉が家に来てから、
家の空気は“家庭”じゃなくて“実験場”になった。
まず義母。
朝から晩までずっとハイテンションで、
「美しさは戦争よ!」
と叫びながら家中を歩き回る。
戦争って何。
義姉Aは鏡を見ながら、
「今日の私、昨日より可愛い。
昨日の私、今日の私に嫉妬してる。」
と、意味不明な自己比較をしている。
義姉Bは常に何か食べている。
食べていない時は、
「食べてない私、偽物じゃない?」
と言いながら食べ始める。
私はというと、
母の12巻を片手に、
家事をしながら魂の輝きをチェックしていた。
義母の魂:
光ってるけど、方向が“上”じゃなくて“斜め”。
しかも速度が速い。魂が常に走ってる。
義姉Aの魂:
鏡に反射して自分に戻ってくる。
自給自足型のナルシスト魂。
義姉Bの魂:
食べ物の形をしている。
魂がパン。
そんな家で、ある朝、義母が叫んだ。
「シンデレラ! 大変よ!
王子様が舞踏会を開くらしいわ!」
いや、知らんがな。
義母は続ける。
「王子様は花嫁を探してるのよ!
つまりこれは“美の戦争”の開戦よ!」
戦争って何(二度目)。
義姉Aは鏡を抱きしめて震えていた。
「ついに…ついに私の美しさが世界にバレる日が来た…
どうしよう…世界が私を欲しがってしまう…」
義姉Bはパンを食べながら言った。
「王子様って美味しいのかな。」
食べるな。
義母は私の肩を掴んで言った。
「シンデレラ、あなたは行かないわよね?
あなたが行ったら、うちの娘たちが霞むじゃない。」
いや、行く気なかったけど、
その言い方はちょっとムッとする。
でも私は母の12巻を思い出した。
第4巻:
“美しい者は、戦場に立つ前にまず掃除をしろ。”
掃除か。
戦場って何。
私は掃除機をかけながら、
義姉たちのドレスをアイロンし、
義母のテンションを受け流し、
義姉Bの食べかけのパンを片付けた。
義姉Aは鏡の前でポーズを研究していた。
「この角度の私、王子様に刺さる。
この角度の私、世界に刺さる。
この角度の私、私に刺さる。」
刺さるな。
義姉Bはパンを食べながら言った。
「シンデレラ、あなたの魂って何味?」
味じゃない。
義母は突然、私の手を握って言った。
「シンデレラ、あなたは美しい。
でも美しさは罪よ。
だからあなたは舞踏会に行っちゃダメ。」
罪って何。
私は心の中でつぶやいた。
「この家、全員やばい。」
でも――
この“やばさ”が、
後に私の人生をとんでもない方向へ導くことを、
この時の私はまだ知らなかった。

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