第3話 地球行きの準備
家に帰ると、母が月石(軽石のようなもの)をゴリゴリ削ってた。
母
「あら、おかえり。
あぁ…そこにある荷物上に運んどいて。重いの持つの得意でしょ?」
かぐや
「お母さん…私、地球に、行くことになった…。」
母
「そう…、知ってるわ。
会社の人から連絡あったもの。」
かぐや
「何もいわなかったの…?」
母
「ええ、私が口を挟むことでもないわ。
だって、もう決まったことなんでしょう?」
かぐや
「そう…だけど…。」
母
「あなたまた肌がつるつるになっているわ。これ(月石)で擦りなさい!」
かぐや
「……今日だけはやめて」
母
「なんでよ。
そのスベスベの肌、見てるとイライラするのよ。
月の民ならもっと月面みたいにガサガサして美しくないと。」
かぐや
「今日は……
いや、自分の部屋でやるよ…
ありがとう…。」
私は母から月石を受け取った。
母
「あら、そう?
地球の民って野蛮なんでしょ?
余計削っといた方がいいんじゃない?」
かぐや
「……」
母
「月の民として恥ずかしくないようにね。」
かぐや
「…うん。」
母
「でもよかったじゃない。
地球って重力強いらしいじゃない。
あなたなら耐えられるでしょ?
力だけはあるんだから」
かぐや
「“だけ”……?」
母
「事実でしょ。
みんな、あんたの力強すぎて怖がってるでしょ?
地球なら野蛮だし、馴染めるんじゃないかしら。」
かぐや
「もういい…。
ユキのことはよろしくね。」
母
「はいはい。
あなたの妹は大丈夫だから。
あの子はちゃんと才能あるし、あなたと違って美しいでしょ?」
かぐや
「……うん」
母
「荷物まとめなさい。
地球って寒いの?暑いの?
知らないけど、適当に持っていきなさい。」
かぐや
「適当って……」
母
「知らないわよ。行ったことないし」
かぐや
「……」
—
部屋に戻ると、妹が立っていた。
妹
「……お姉ちゃん、本当に行くの?」
かぐや
「辞令だからね。
断ったら月で生きていけないし」
妹はいつも通り無表情だったけど、
目の端が少し赤かった。
「……やだ」
かぐや
「…え?」
妹
「お姉ちゃん、やだ。
行かないでよ……」
かぐや
「……」
妹
「だって……お姉ちゃんの肌、きれいだもん。
目も大きくて……口もかわいいし……
月の人、みんな変だよ……
お姉ちゃんの方が、絶対かわいいのに……」
かぐや
「……そんなこと言ってくれるの、あんただけだよ」
妹は泣きながら、私の袖をぎゅっと掴んだ。
妹
「……帰ってきてね」
かぐや
「……うん。
帰れたらね」
—
荷物を詰めながら、鏡を見た。
白い肌。
大きい目。
大きい口。
月では全部“欠点”。
でも私は、この顔が嫌いじゃなかった。
むしろ好きだった。
ただ——
誰もそう言ってくれなかっただけ。
(……地球では、どうなんだろう)
スーツケースに月石と服を詰めて、
私は静かに息を吐いた。
(私の力……怖がられないといいな)
(私の顔……笑われないといいな)
(地球で……受け入れられるといいな)
そう願いながら、眠りについた。
明日にはもう、私はシャトル乗り場か…


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