『親子バンド イカれた息子とスラップ厨の父』 第七話 二曲目「校歌・総合現代音楽」
(語り手:息子)
一曲目の“現代音楽事故”をなんとか乗り切った俺たち。
いや、乗り切ったというより、
田中ワルツ先生が勝手に救ってくれたと言ったほうが正しい。
あと10分。
二曲目で絶対に立て直す。
父さんのスラップは強すぎる。
あれに合わせるのは無理だ。
歌で合わせるなんてもっと無理だ。
だから俺は、
父さん対策の最終手段を思いついた。
俺
「次は……校歌をやります!!」
観客
「校歌!?」
「なんで!?」
「これも現代音楽か!?」
父さんが驚いた顔をした。
父さん
「校歌か…懐かしいな。」
そう、父さんもこの学校の卒業生だ。
なら歌える。
絶対に歌える。
俺
「父さん、校歌なら……一緒にできるよね?」
父さんはゆっくり頷いた。
その顔が、なんか……嬉しそうだった。
そのとき。
田中ワルツ先生
「校歌を歌うなら……私に伴奏をさせてください!!」
ステージ裏から飛び出してきた。
涙目で。
なぜ泣いてるのかは知らない。
でも、
この人は現代音楽に命を懸けている。
心強い助っ人だ!
俺
「是非、お願いします!!」
こうして──
ピアノ、ギター、ベースのトリオが完成した。
—
(語り手:息子)
田中ワルツ先生のピアノが静かに始まる。
荘厳で、美しい。
普通に美しい。
観客
「おお……」
「ちゃんとしてる……」
俺はギターでコードを重ねる。
父さんはまだ弾かない。
歌う準備をしているのか。
俺
(父さん……今度こそ一緒に……!)
俺たちは歌い始めた。
—
✦ 校歌 一番
朝の光が揺れる校庭に
まだ形のない夢が転がっている
拾えば泥まみれ 捨てれば消える
選ぶたびに 胸の奥がざわめく
混沌の箱庭で 芽吹くものあり
迷いの数だけ 強くなる心
—
観客も歌い始める。
近所の一般客まで歌ってる。
みんな母校かよ。
教頭は──
首を縦に激しく振っていた。
完全にビジュアル系のノリ。
校歌でやるなよ。
でも、
この一体感……悪くない。
むしろ最高だ。
—
(語り手:息子)
そして一番が終わる瞬間。
俺は父さんにアイコンタクトを送った。
父さんは何かを悟ったような顔をした。
父さん
「……なるほど。」
次の瞬間──
高速スラップが校歌に突入した。
ドゥルルルルルンッ・ギュイイイインッ・ズワァァァンッ!!!!!
ドドドドドドドドドドドド!!
観客
「えええええええええええ!!!」
「校歌にスラップ!?」
「やっぱり来るのかよおおお!?」
スラップが加わったことで校歌の難易度が激増した。
でも、
歌は止まらない。
みんなも必死についていく。
—
✦ 校歌 二番
雨の放課後 拳を交わして
言えなかった言葉がやっとこぼれた
涙の味より 悔しさが勝って
気づけば肩を並べて笑っていた
友とぶつかり 友情は鍛えられ
傷跡さえも 明日の誇りとなる
—
雪崩のような父さんのスラップは止まらない。低音の暴力、ファンキーの鬼、支配されるリズム。
だけど心地がいい。
女子高生が泣いてる。
「マジ低音!マジ母体の中!マジ母さんありがとう!あと父さんも!!」
3バカは、3人で肩を組んで飛び跳ねながら叫んでる。
「神様降臨!神様降臨!我がロックの父よ、我らに道を示したまえ!」
教頭はヘドバンしながら歌ってる。
「キェエエエエエエエエエ!!」
観客も父さんに負けないように魂で叫んでいる!
父さんのスラップは止まらない。
でも、
その音が……みんなを一つにする。
すごいよ父さん!
—
✦ 校歌 三番
夕暮れの窓に映る横顔は
昨日より少しだけ遠くを見ている
悔しさも誇りも 全部抱きしめて
未来へ伸びる影を踏みしめて進む
過去を写して 未来へ夢を見よう
ここで育った心よ どこまでも行け
—
(語り手:息子)
そして三番。
父さんは高速スラップを続けながら──
デスボイス風のコーラスを入れてきた。
「グワァァァァッ!!ヴォロロロロロロロロロロォォォ!!ズガァァァァァァァァ!!!」
会場全てを飲み込む。
なんだこれ。
もはや
でも最高だ。
—
観客
「うおおおおおおおおお!!!」
「なんだこれ!!!」
「魂ふるえるううぅう!!!」
近所の一般客まで全力で歌ってる。
みんな校歌知ってるんだな。
田中ワルツ先生はピアノを弾きながら泣いてる。
田中ワルツ先生
「これが……現代音楽の……総合芸術だぁああああああ!!!!」
大地が揺れ、空気が喜びに震えた。
最後の和音が鳴り響く。
──静寂。
そして。
観客
「うおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「最高だあああああああ!!!!!」
汗と涙と歓声。
全員が満足した顔をしていた。
俺は父さんを見た。
父さんも俺を見ていた。
父さん
「……いい校歌だな。」
俺
「うん……最高だよ、父さん。」
こうして、激しい余韻を残しながら二曲目が終わった。
残り5分
おそらく次が最後の曲!
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