『親子バンド イカれた息子とスラップ厨の父』 第一話「前日崩壊」
(語り手:息子)
俺はずっと思っていた。
この学校の文化祭は、俺たちのバンドが学校を席巻する日になると。
ギター&ボーカルの俺
ドラムの多々木(タタキ)
ベースの梵(ボン)
サブギターの雀(ジャン)
前日のスタジオ。
練習もバッチリ。
とても緊張するが、俺たちならなんとなるだろう。
…と思っていたが、練習中の俺の失言で、バンドは解散した。
一生解散なのか、一時的な解散なのかは、わからない。
だが、バチクソ怒らせたせいで、明日の文化祭までには、絶対仲直りできないだろう。
もうあの男に頼るしかない。
天才ベーシスト(自称スラップ厨)の父さんだ。
その前に、解散前のスタジオはこんな感じだった。
—
練習前日。
俺たちはスタジオにいた。
「なぁボン!(ベース担当)、そこのフレーズさ、もっとスラップでいこうよ!」
「…は?いや、俺ピック弾きなんだけど…?あともう前日だよ?何言ってんの?」
「だからだよ!
父さんのスラップ昨日聴いたらさ、ピックとかもはや“白亜紀”で古いどころじゃねえからさ!もうやめちまおうぜ!!」
「白亜紀……?」
「うん。父さんのスラップって、もう“23世紀”だから」
「お前何言ってんの……?」
「そう。だからボンも23世紀に来いよ!!全部スラップにしてみろよ!!」
「いや無理だって。俺スラップやったこと──」
「父さんは大人になってから始めて、もうプロ超えちゃってんだよ?
凡人のボンはもっとがんばらなきゃ!一緒にがんばろうぜ!!」
「お前何言ってんの!?…もう前日なんだけど!??
お前の父親とかこのバンドに何も関係ないだろ!
あと凡人っていうな!!」
ボンがマジギレ寸前だ。
ここはなだめないと…
「あぁ、ごめん父さんは天才で、ボンは凡人だから、そこまで求めてないよ!ボンだけにね!!」
ニコッと笑っといた。笑顔は人生の潤滑油。
「お前イカれてるよ!!どういう気持ちでその言葉喋ってんの!?
俺のこと煽ってんの?なんで笑ってるの!?!?」
まずい、ボンがさらにヒートアップしそうだ…。ここは冗談で場を収めるしかない!
「おちつけよ!…ボンクラ!!」
「キェエエエエ!?エエエエエッエエエエ!、!!!、!、?!!」
ベーシストのボンが殴りかかってきた。
危ないので、習ってる合気道で手首と襟を掴んでそのまま投げた。
ベースごとを地面に叩きつけられ、ボンが泣きながら退場した。
「ウェエエエエゥ!?!!あゝアアアァエエエエアアッアア!!!、?!」
—
タタキ(ドラム担当)に向き直る。
「タタキ!明日のドラムなんだけどさ!」
「……おい、なんだよ?この地獄みたいな空気で普通に喋ってくんじゃねえよ。怖えだろ…サイコパスかよ?」
「父さんのスラップを聞くとさ、もはやドラムとか、うるさいだけだよね?」
「…は?また父さん?てかいまなんて?うるさ?」
「いや、悪い意味じゃなくてさ!父さんのスラップってもはや“リズムそのもの”だからさ!
スラップあれば、もはやドラムとかいらないかもよってこと!!」
「お前…どうしちまったんだ??ドラムいらない?どう解釈したら悪い意味じゃなくなるんだ?」
あーまずい。なんかドラムのタタキまで悪い方向にいっちゃいそう…。
悪気がないこと伝えなきゃ!
「あーごめん、言い方が悪かったかな。別にタタキにはもっと自由でいて欲しいんだ!
例えばドラムにこだわらなくてもいい!そう!叩きたかったら小太鼓とかでもいいんだぜ!!」
「小太鼓?何言ってんだお前!!バンドの意味分かってんのか!?
なんで文化祭前日に、俺が小太鼓持って叩いて回んなきゃいけねぇんだよ!!エェッ!!??」
タタキのマジギレ寸前の“エェッ!!??”が出てしまった。
ここは大人の対応をしなければ…
「冷静になれ、なんとなく機嫌が悪い日もあるよな。わかるよ。」
「全部お前なんだよ!!
さっきまで穏やかにやってたんだよオオオオオ!!このサイコパス野郎がああああぁあああ!!!」
タタキ、スティックを叩き折って消えた
—
残ったジャン(ギター担当)の方に向き直る。
「ジャンは辞めないよな?」
「いや……その……なんか……」
「ありがとう…君だけが仲間だよ!」
「…やめる!!」
ジャンもいなくなった…
—
スタジオに残ったのは俺ひとりだった。
ギターの音が虚しく響く。
でも俺は負けなかった。
……いいよ。
「凡人の遺伝子じゃ音楽は救えねぇんだよ!!
明日を楽しみにしておけよ!!!」
と全体LINEに送っといた。
即全員脱退した。
よくわからないけど、とりあえず父さんに相談してみるか!!


コメント