『親子バンド イカれた息子とスラップ厨の父』 第二話 「巻き込まれる父」
(語り手:息子)
家に帰ると、父さんはいつも通りソファに座っていた。
テレビを見ながら、指だけでスラップの練習をしている。
音は出てないけど、指の動きが速すぎて残像が見える。
「…父さん、ちょっと相談があるんだけど」
「ん?どうした?
ついに明日が文化祭か!
父さんは仕事で見に行けないけど、頑張れよ!!」
「……解散した」
父さんはテレビのリモコンを置いた。
その動作が妙に静かで、逆に怖い。
「えっ?前日に?いったいどうして?音楽性の違いか??」
「あー…そうだね。音楽性の違いといえば違いかな…。まあ俺が…ちょっと…色々言いすぎたってのもあるけど…」
父さんは少し考えてから言った。
「お前には俺と違って音楽の才能がある!だから仲間は本番を前にプレッシャーに押しつぶされそうだったんだろう。バンドでは良くあることだ!」
「よくあることなの…?」
「いや、わからん!父さんはバンドをやったことがないからな!大人になってから始めた陰キャ系在宅ベーシストのスラップ厨だからな!」
親父がときどき名乗るとても長い肩書き。その分野に絶対の自信があるから名乗っているんだろう。
「その…どうすれば、いいと思う…?」
「ん?普通に考えたら、残念だがライブは中止だろ??
仕方ないこともある!」
「いや…今回は出るしかないんだよ…。ほんとに…。」
「なぜだ?まあ出たい気持ちはわかるが、ここで無理しても仕方ないぞ。バンドはバンドだからな!!
ちなみに引けない理由とはなんだ?」
「いや、メンバーにボロクソ言っちゃって…、明日を楽しみにしておけ!と大見栄切っちゃった!」
「んー、我が息子はスペックが高い代わりに配慮に欠けるところがあるからな。まあ天才とはそういうものだ。弾き語りにでも変更するのか?」
「いや…父さん…と…出たい…。」
「ん?…なんだって?何か聞こえた気がするぞ…。」
「父さんとでたい!!!父さん!!明日一緒に出て!!おねがい!おねがい!おねがい!!おねがあぁあい!!!」
「な、なな、な…何を言っているんだ…!高校生の文化祭だろ?普通のおじさんは入れないだろう!?」
「先生には事情を話している!もうオッケーも貰っている!!
だから、父さん!!明日一緒に出てよ!!」
「いやいやいやいや、明日平日だぞ?普通に仕事あるし、会議あるし──」
「前、有給余ってるって言ったじゃん!!
ちょこちょこ休まないと消えるって言ってたじゃん!!
息子のピンチなんだよ!!助けてよ!!マジで助けてよおお!!!」
父さんは頭を抱えていた。
「…その強引さ、母さんそっくりだ…。」
「僕は父さんの子でもあるよ!母さんも父さんを説得してよぉお!!」
母さんキッチンから登場
「あなた、息子の晴れ舞台よ。力を貸してあげてちょうだい。あなたこの前出世ルートから外れたから気が楽だと言っていたわよね?
もし会社に居づらくなっても私が稼ぐから大丈夫よ。安心して行ってらっしゃい。」
諦めたように父さんは言った。
「……はぁ……わかったよ。有給取るよ…もう、強引なんだから…」
「父さん!!」
母さんは強い。そして父さんは押しにめちゃくちゃ弱い。だからいつも押し切られる。
天才なのに、謙虚。
だから天才ベーシストにも関わらず、世間からの注目がないのだ。
そう、この舞台は父さんを世界が発見する日でもあるのだ!
「でも俺ほんとにバンド経験ゼロだからな?合わせられないぞ?」
「大丈夫!!父さんは天才だから!!」
父さんは天を仰いだ。
こうして、
文化祭前日の夜に、
俺と父さんの“親子バンド”が結成された。
—
第二話 「巻き込まれる父」
(語り手:息子)
家に帰ると、父さんはいつも通りソファに座っていた。
テレビを見ながら、指だけでスラップの練習をしている。
音は出てないけど、指の動きが速すぎて残像が見える。
「…父さん、ちょっと相談があるんだけど」
「ん?どうした?
ついに明日が文化祭か!
父さんは仕事で見に行けないけど、頑張れよ!!」
「……解散した」
父さんはテレビのリモコンを置いた。
その動作が妙に静かで、逆に怖い。
「えっ?前日に?いったいどうして?音楽性の違いか??」
「あー…そうだね。音楽性の違いといえば違いかな…。まあ俺が…ちょっと…色々言いすぎたってのもあるけど…」
父さんは少し考えてから言った。
「お前には俺と違って音楽の才能がある!だから仲間は本番を前にプレッシャーに押しつぶされそうだったんだろう。バンドでは良くあることだ!」
「よくあることなの…?」
「いや、わからん!父さんはバンドをやったことがないからな!大人になってから始めた陰キャ系在宅ベーシストのスラップ厨だからな!」
親父がときどき名乗るとても長い肩書き。その分野に絶対の自信があるから名乗っているんだろう。
「その…どうすれば、いいと思う…?」
「ん?普通に考えたら、残念だがライブは中止だろ??
仕方ないこともある!」
「いや…今回は出るしかないんだよ…。ほんとに…。」
「なぜだ?まあ出たい気持ちはわかるが、ここで無理しても仕方ないぞ。バンドはバンドだからな!!
ちなみに引けない理由とはなんだ?」
「いや、メンバーにボロクソ言っちゃって…、明日を楽しみにしておけ!と大見栄切っちゃった!」
「んー、我が息子はスペックが高い代わりに配慮に欠けるところがあるからな。まあ天才とはそういうものだ。弾き語りにでも変更するのか?」
「いや…父さん…と…出たい…。」
「ん?…なんだって?何か聞こえた気がするぞ…。」
「父さんとでたい!!!父さん!!明日一緒に出て!!おねがい!おねがい!おねがい!!おねがあぁあい!!!」
「な、なな、な…何を言っているんだ…!高校生の文化祭だろ?普通のおじさんは入れないだろう!?」
「先生には事情を話している!もうオッケーも貰っている!!
だから、父さん!!明日一緒に出てよ!!」
「いやいやいやいや、明日平日だぞ?普通に仕事あるし、会議あるし──」
「前、有給余ってるって言ったじゃん!!
ちょこちょこ休まないと消えるって言ってたじゃん!!
息子のピンチなんだよ!!助けてよ!!マジで助けてよおお!!!」
父さんは頭を抱えていた。
「…その強引さ、母さんそっくりだ…。」
「僕は父さんの子でもあるよ!母さんも父さんを説得してよぉお!!」
母さんキッチンから登場
「あなた、息子の晴れ舞台よ。力を貸してあげてちょうだい。あなたこの前出世ルートから外れたから気が楽だと言っていたわよね?
もし会社に居づらくなっても私が稼ぐから大丈夫よ。安心して行ってらっしゃい。」
諦めたように父さんは言った。
「……はぁ……わかったよ。有給取るよ…もう、強引なんだから…」
「父さん!!」
母さんは強い。そして父さんは押しにめちゃくちゃ弱い。だからいつも押し切られる。
天才なのに、謙虚。
だから天才ベーシストにも関わらず、世間からの注目がないのだ。
そう、この舞台は父さんを世界が発見する日でもあるのだ!
「でも俺ほんとにバンド経験ゼロだからな?合わせられないぞ?」
「大丈夫!!父さんは天才だから!!」
父さんは天を仰いだ。
こうして、
文化祭前日の夜に、
俺と父さんの“親子バンド”が結成された。


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