✨『銀河鉄道の夜は終わらない』第4章 3人目陰キャ、静かに登場
三人の距離が一気に縮まる瞬間**
ガリバーとデブネルになった俺たちは、
名前を呼び合うたびに、
少しだけ“仲間”になった気がしていた。
「ガリバー、次の駅ってどこなんだろうね」
「知らん。てか駅あるのか?」
そんな会話をしていた時だった。
——カサッ。
車両の隅で、
誰かがビクッと肩を震わせた。
「……あの……」
小さな声。
俺たちの方を見ているのに、
目は合わない。
黒髪、猫背、パーカー。
存在感が薄いのに、
なぜか“気配”だけは強い。
デブネルが小声で言う。
「ガリバー……あの人、ずっとあそこにいたよね……?」
「いや、いたか……?
俺、今初めて認識したんだが……」
「……あの……」
また声がした。
今度は少しだけ大きい。
「な、中に入ってもいいで……しょう…?」
最後に『か』が聞こえた気がした。
「えっだれ……?」
「……はい……。
あの……わたくし……℃☆⁂%§と、も、もうし…やしゅ…。」
多分名乗ったんだろう。
俺は聞き取ることをあきらめた。
「まあとにかく座れよ。そこにいちゃきこえねぇよ」
「……は、はひ……。じゃ、じゃあ…失礼します…。」
1番遠くの席に座った。
「いやこの流れでおかしいだろ。この距離のどこに失礼があるんだよ!」
「す、すみません…。そちらにす…座らせて…い…いただきます。」
この挙動不審男だいぶテンポが悪い。このままじゃ本当に天国までいっちまいかねない。
「じゃあ、せっかく一緒になったんだ。よろしくな!」
「よろしくね。」
デブネルも挨拶した。
「さっき聞こえなかったからもう一回ちゃんと名前を聞かせてくれ。ちゃんといい名前頼むぞ!」
この流れ、3人目もひょっとしたら、俺たちの仲間になるかもしれない。
この猫背で小さくていじいじしているが、悪いやつではなさそうだ。
名前次第ではあるが。
「ぼ、僕の名前は……。」
周りに緊張が走る、周りと言っても俺とデブネルしかいないのだが。
「か、かいおんじ、しょうです!」
勇気を振り絞ったのか今回はよく聞こえた。しかしよく聞こえすぎた。
「聞き間違いかなー?かいおんじ?しょう?正気か?」
「ガリバー名前を責めるのはよくないよ。」
こいつは育ちがいいのかまともなことを言うな。
続けてデブネルは言った。
「ま、まだ、まだチャンスはあるよガリバー!漢字を、漢字を…きいてみようよ!」
こいつ俺以上に必死だった。
「なるほど、海音寺翔(かいおんじしょう)ね。」
流れと期待を裏切るほどの、全国トップクラスの名前のかっこよさだった。
俺とデブネルは項垂れた。
「よ…よろしく…お願いします…。」
海音寺はよわよわしく言った。
「よろしくといいてぇところだが、今のままじゃダメだ!」
「そうだよ、君だけかっこいい名前で呼ばれるなんて、そうは相場が許さないよ」
とりあえず認めたくないという意味らしい。
「そんな…。勇気を振り絞ったのに…。」
「いや、まだチャンスはある!そう千載一遇のチャンスがな!」
「僕たち2人で君にあだ名をつければなんの問題もないよ!」
デブネルもノリノリである。
「じゃ…じゃあ…お願いします…。」
「そうだな、こう言うのは見た目の特徴でいくと、覚えやすいし親しみやすくなるもんだ。」
「見た目…。」
「インキャだな!インキャ!でどうだ?」
「ガリバーさすがにそれはヤバすぎるよ。直接的すぎて今の時代を生きれるモラルではないよ。」
デブネルに注意された。
「じゃあインファで!特に意味はないと言うことにしてくれ!」
「インファいいんじゃない?だいぶよくなったよ。さすがガリバー、成長したね。」
「あ…改めまして、インファと申します。す、少し引きこもり気味でした。」
「よろしく!引きこもることはいいことだ!俺は引きこもりたくてしょうがなかったからな!」
「僕も家にいることが多かったから分かるよ。外歩くと膝が痛くなるもんね。」
とおおよそ10代には共感できないことを言うデブネル。
まあ3人目も無事名前が決まった。
名前が決まると、
人は急に“仲間”になる。
銀河鉄道の車内は、
さっきより少しだけ暖かかった。
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