私はシンデレラと申します。
母は長いあいだ病気で、もうあまり時間が残されていないことを、私も薄々わかっていました。
信じたくはありませんでしたが、私は人の“魂の輝き”が見える体質で、母の光が日に日に弱くなっていくのを感じていたのです。
母はとても優しく、美しく、そして魂そのものが澄んだ人でした。
その光が弱っていくのを見ながら、私はただ祈ることしかできませんでした。
ある日、母は私を枕元に呼びました。
「シンデレラ、私はもう長くないの。あなたに教えたいことは山ほどあったけれど、これが最後の教えになるのを許してね。」
「ママ、そんなこと言わないで。私もっといい子でいるから、行かないで…」
母は私の手を握り、静かに言いました。
「シンデレラ、よく聞いて。あなたは私に似てとても美しい。きっと大人になってもその美しさを保てるでしょう。その美しさを使って、人生を上りつめなさい。
でも、美しさに驕ってはいけません。その美貌にふさわしい“器”に成長するのよ。」
「器…?美貌…?そんなの、わからないよ…」
「大丈夫。わかる日が来るわ。だってあなたは美しく、私の子だもの。」
そう言って、母は一度目を閉じた。
私は「これが最期なんだ」と思った。
……が、母は急に目を開けた。
「そうそう、まだ言い足りなかったわ。狙った男の落とし方をね、今から言うから逃さず聞きなさい。あ、でもメモはいらないわよ。もうノウハウは12冊の本にまとめてあるから。必ず役立ててね。そしてできれば私の名前で出版して。大ヒット間違いなしよ。印税が入ったら、そしたら私は――ガクッ」
母は、人生で一番饒舌になったところで、力尽きた。
何がなんだかわからなかったけれど、最期の母は、見たことがないほど幸せそうだった。
後で母の部屋を探したら、本当にあった。
『美しさは罪ではない、この世の宝である』全12巻。
圧巻の厚みだった。
こうして私は、母の野望を背負い、
“美貌サバイバル”という名の苦悩と苦労の物語へと放り込まれることになった。

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