『かぐやは月には帰れない』第6話 翁(おきな)、貨物を迎える

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◆第6話 翁(おきな)、貨物を迎える

語り手(翁視点)

月からの定期貨物の日だ。

今日、“ひとり”送られてくる——らしい。

“らしい”という曖昧さが、胸の奥をざらつかせる。

地球送りなんて滅多にない。

それなのに、性別も年齢も、到着時刻すらも知らされていない。

まったく、月の奴らはいつもこうだ。

配慮という言葉を知らんのか。

地球で生きる苦労を、あいつらは何ひとつ理解していない。

もし月の上層部が地球に来たら、

一日で泣きながら倒れるだろう。

それほど、この星は“月の民にとって”過酷な場所だ。

胸の奥がじりじりと焼けるようだった。

自分たちを選ばれた存在だと勘違いした無能どもめ。

……だが、文句を言っても始まらない。

地球送りにされる者は、たいてい何か事情を抱えている。

こっちはこっちで、全力で守るだけだ。

問題は——

どうやって来るのかが分からないことだ。

貨物と同時か?

それともズレて落ちてくるのか?

夜ならまだいい。

だが昼間に落ちてきたら、救出は命懸けになる。

月の連中にとっては“送って終わり”だろうが、

こっちはそこからが本番だ。

定期貨物便は月一で来るが、

だいたい地球では役に立たねぇガラクタばかりだ。

こっちは必死で生きてるってのに、向こうはお気楽なもんだ。

……さて、今回“地球送り”にされた者は、どんな事情を抱えているんだろうか。

そう思った瞬間だった。

——ドォォォォンッ!!!

爆音。

地面が揺れ、空気が震えた。

耳がキーンと鳴る。

「……なんだ、この衝撃は……?」

待機していた仲間たちも顔を見合わせる。

「まさか……昼間に……?」

煙が上がる。

落下地点は、うちの農場のすぐ近くだ。

急いで駆けつけると、そこにあったのは——

貨物用カプセル。

「……は?」

貨物だけか?

人は別で来るのか?

いや、違う。

この衝撃、この音……

いつもの貨物とは何もかも違う。

「……まさか……

貨物用カプセルに……人を乗せたのか……?」

怒りで手が震えた。

胸の奥が熱くなる。

あいつらの倫理はどこまで腐っているんだ。

だが、怒りより先にやることがある。

救出だ。

地球の光は月の何倍も強い。

長旅で光を浴びていない身体には致命的だ。

まずはカプセルの周囲を遮光布で覆う。

そして、ダメージを最小限にするため、慎重に蓋を開ける。

中を覗いた瞬間、息が止まった。

「……若い……女の子……?」

白い肌。

長い手足。

月では珍しい顔立ち。

だがその身体は縄で縛られ、貨物の隙間に押し込まれていた。

「……なんて扱いだ……」

胸が締めつけられた。

すぐに目を黒い布で覆い、光を遮断する。

手足をそっと解き、抱き上げる。

軽い。

あまりにも軽い。

長旅で力が抜けているだけだ、と自分に言い聞かせた。

「……生きているか……?」

そのとき、かすかに唇が震えた。

「あ……う……

わ……た……」

言葉にならない声。

必死に何かを伝えようとしている。

「無理に喋らなくていい!

話はあとでゆっくり聞ける!

今は俺たちを信じて、身体を預けてくれ!!

一刻を争う!」

「……う……」

その瞬間、彼女の身体から力が抜けた。

無理もない。

どれほど過酷な旅だったのか。

どれほど雑に扱われてきたのか。

胸の奥がじんと熱くなる。

「大丈夫だ。

ここからは俺たちが守る。

必ず地球に慣れさせてやる。

ここを……お前の居場所にしてやる。」

月の連中には、いつか必ずわからせてやる。

だが復讐より先にやることがある。

まず、この娘を救うことだ。

俺は彼女を抱え、

薄暗い療養室へと急いだ。

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