『親子バンド イカれた息子とスラップ厨の父』第八話 最終曲「魂の現代音楽」
(語り手:息子)
二曲目の校歌で、体育館はすでに一つになっていた。
汗と涙と笑顔。
こんな文化祭、見たことがない。
でも──
まだ終わっていない。
あと5分。
最後の曲。
ここで、父さんと俺の“伝説”を完成させる。
俺
「父さん…最後だよ…。行こう!」
父さんは静かに頷いた。
その横顔が、なんか……覚悟を決めた戦士みたいだった。
田中ワルツ先生にも目線を送るが、
先生はピアノの前で震えていた。
泣いているのか、興奮しているのか、もうわからない。
観客は息を呑んでいる。
静寂。
体育館が止まった。
そして──
父さんが、
6弦ベースを構えた。
—
次の瞬間。
“鬼のスラップ超絶技巧練習曲・最難関フレーズメドレー”が始まった。
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
バチバチバチバチバチ!!!!
ギュイイイイイイイイイイン!!!!
観客
「うわああああ!!」
「きたぁああああ!!!」
「まだペース上がんのかよおお!!!」
父さんのベースはもはや振動さえも置き去りにしている。
揺れたと感じる前に身体がすでに揺れている。
体育館の鉄骨が嬉しそうに共鳴している。
俺は震えた。
俺
「父さん……最高だよ……!!」
俺はギターを構え、
アドリブで父さんの音に飛び込んだ。
音がぶつかる。
火花が散る。
でも、
父さんの音は優しい。
俺を導いてくれる。
—
そこに──
田中ワルツ先生のピアノが入った。
いや、
飛び込んできた。
先生
「なぁああうああアアアうアアアアアうああああああぁあ!!!!」
泣きながら天を見上げて笑っている…
もはや昇天している
ピアノの鍵盤が壊れそうな勢いで叩かれている。
観客
「なんだぁこのピアノオォオオ!!!??」
「こんなピアノ聞いたことねぇええ!!!」
「ピアノも負けちゃいねえぇ!!」
音が弾け合う。
だが音は混ざる。
ぶつかるのに、溶ける。
父さんのスラップ。
俺のギター。
ワルツ先生のピアノ。
三つの音が、
混沌の中で一つになっていく。
—
そして、父さんのデスボイス
「グワァァァァッ!!ヴォロロロロロロロロロロォォォ!!ズガァァァァァァァァ!!!」
ワルツ先生の奇声
「クワァアアアあああうああぁああ!!!」
俺
「お前らも叫べぇええええええ!!!」
観客が──
叫び始めた。
観客
「うおおおおおおおお!!!」
「ありがとう!!!」
「青春返せ!!!」
「好きだあああああ!!!」
「人生やり直す!!!」
「父さんかっこいい!!!」
女子高生は泣きながら叫び、
3バカは肩を組んで絶叫し、
教頭は首を折りそうな勢いでヘドバンしながら叫んでいる。
近所の一般客までも叫んでいる。
その叫びが──
音楽になっていく。
父さんのスラップが受け止め、
俺のギターが繋ぎ、
ワルツ先生のピアノが包み込む。
叫びが歌になり、
歌が音になり、
音が光になっていく。
—
父さんも叫ぶ
スラップをしながら──
「うおおおおおおおおおおお……!!」
その声が、
なんか……泣いているように聞こえた。
俺は涙が止まらなかった。
俺
「父さん……俺……
父さんと音楽できて……
ほんとに……幸せだよ……!!」
父さんは笑った。
スラップしながら、笑った。
父さん
「俺もだ、ありがとう…!!」
—
音が爆発した。
叫びが溢れた。
涙が飛んだ。
笑顔が広がった。
体育館が揺れた。
世界が揺れた。
そして──
最後の一音が鳴り響いた。
ドォォォォォォォォン……!!
静寂。
観客
「……………………」
そして。
観客
「うおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「最高だあああああああ!!!!!!」
「ありがとうおおおおおお!!!!!!」
涙と汗と歓声。
全員が泣いていた。
全員が笑っていた。
田中ワルツ先生は、
ピアノに突っ伏して泣いていた。
ワルツ先生
「これが……現代音楽の……究極形だ……
みなさん……ありがとう……!!」
父さんは俺の肩を抱いた。
父さん
「……いい音だったな。」
俺
「うん……最高だよ、父さん。」
こうして──
伝説のステージは終わった。
—


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