✨『銀河鉄道の夜は終わらない』
12章 マッド悩み相談
“非常講師”マッドの悩み相談(授業)が始まった。
どうやらマッド(理科の中学教師)は科学を愛するあまり、毎回少しやりすぎてしまい、自分が所属する学校や生徒、その保護者たちとの溝が深まっていってしまっている、そんな悩みがあるらしい。
ガリバー
「まあでも、怪我させるのは論外だけどよ。そういう面白い実験してくれる先生って、ある意味貴重なんじゃねえか?」
マッド
「ワシもそう思いたいんじゃがのう。ワシには少し悪い癖があっての…。」
インファ
「…悪い癖…?」
マッド
「そうやって面白がってくれる生徒がいると、逆に距離を置いてしまうんじゃ…。」
ミヤビ
「あー人見知りなんですね…」
(この見た目だし、コミュ力求めるのが酷よね。)
マッド
「いや…嬉しさあまって逆のことを言ってしまうのじゃ…」
ガリバー
「あー、ツンデレ的なやつ?ちなみになんて言うんだ?」
マッド
「こんな感じかの…。」
『このひよっこが!貴様に科学の何が分かる!?えぇ?実験は見せもんじゃあないわい!心を洗って出直してくるんじゃああああ!!フォオオオオオ!!キィエェエエィ!!』
4人
「………!」
デブネル
「このジジイやっぱ狂ってるよ。マッドの名は伊達じゃないよ!」
ミヤビ
「なんでそうなるの…?」
(あんたの心を洗い流しなさいよ!)
インファ
「トラウマ…レベル…』
ガリバー
「本当に一緒に考えて欲しいのか?」
マッドは少し正気を取り戻した末に言った。
「…もちろんじゃ…」
とりあえずマッドを落ち着かせて、要点を整理した。
だいたいまとめると
・学校、生徒、保護者などとうまくいってない
・授業中危険な実験で生徒が怪我(軽傷)→謹慎の流れ
・興味持ってくれる生徒を嬉しさのあまり恫喝する
・受験には興味がなく、生徒の相談に乗らない
その他問題行動多々…
ガリバー
「なんとなく分かったけどよ…。だいたいアンタが悪いよな?」
デブネル
「なんでクビにならないか不思議なレベルなんだけど?」
ミヤビ
「受験の相談乗らないとか、そりゃ生徒、保護者に好かれるわけないわよ?」
インファ
「…孤立無援…」
マッド
「そうじゃの、ワシが全部悪いんじゃ…。どうしても自分の行動がセーブできなくての。科学者になれなかった自分のコンプレックスを今も引きずってるかもしれんの。」
ガリバー
「科学者になりたかったのか。なんとなく振る舞い見てれば分かるけどよ。でもあんたは科学者じゃないよな。」
マッド
「わかっとる…。でも科学を愛してるのは本当じゃ、生徒もこの仕事も愛しておる…」
ミヤビ
「じゃあ…どうして…?」
マッド
「子供達にも科学を好きになって欲しいんじゃ。普通の教育ではやらない実験もやり、少しでも科学に興味をもってもらい、将来、科学者を目指す子供が増えたら良いと考えてもいるんじゃ!」
デブネル
「それって理想の押し付けだと思うんだよね。現に自分のコンプレックスを押し付けているだけじゃない?行動も結果も裏腹だし。裏にあるのは自己愛だけでは?」
マッド
「………。」
ガリバー
「まあ、アンタが科学を好きなのは間違いないだろうよ。生徒のことも大事に思ってるのも嘘ではないんだろう。だけど、今のままだと逆に科学を嫌いになる生徒も出てきてもおかしくねぇと思うけど?」
マッド
「…その通りじゃ…。ワシは…自分かわいさで、そのちっぽけなプライドを守るために…、科学を盾に生徒に接してきたのかもしれん…。」
ミヤビ
「でも、子供だってそうよ。私たちだってそのちっぽけなプライドを守るために、日々あらゆるものを犠牲にしてしまっているかもしれない…。何も変わらないの。私たち(子供)の延長線上にあなたたち(大人)がいる!」
マッド
「やさしいのぅ…。ダメなことはわかっているが、ワシの評価も地に落ちとる。減給は免れんし、謹慎が明けるかもわからん。明けても次何かミスをしたらおそらく終わりじゃ…。唯一の科学との接点もなくなってしまうわい…。本当に愚かな男じゃの…。」
インファ
「まま…まだ、諦める…のは…早いと…思います…!」
ミヤビ
「インファ…!」
ガリバー
「そうだぜ!まだいくらでもやり直せる…とはいわねぇが、チャンスはまだあるんだ。なぁ、マッド…謹慎中に現実逃避の実験なんかしてんじゃねえよ、できることはまだあるはずだぜ。」
チャンス…正直俺にも、みんなにもまだ残ってるかはわからねぇ。だけど、戻ってやりたいことがある!
デブネル
「ガリバー、このジジイにできることって?」
マッド
「実験を成功させる!ということじゃろうか?」
ガリバー
「実験からはもう離れろ。まずなんのための謹慎だと思う?」
ミヤビ
「反省させるためよね?」
ガリバー
「ああそうだ。しかし謹慎中にも危険な実験をして、気を失ってるやつが反省してるように見えるか?」
インファ
「見えない…」
ガリバー
「表で今回のことがどれだけ事件になっているのかはわからないが、もし誰かの耳に入れば、さらに事態は悪化する。そうならないために『誠意』を見せる必要があるんだよ。」
デブネル
「あーなるほどね!このじいさんに欠けてるのは、確かに誠意そのものだもんね。」
ガリバー
「なあマッド。怪我させてしまった生徒に直接謝ったか?」
マッド
「うむ。一応、保護者が怒鳴り込んできたときに流れで謝罪はしたはずじゃ…」
ガリバー
「それじゃダメなんだよ!一応じゃダメなんだよ!まず自分から菓子折り持って、身なりを整えて謝罪に行くのが筋ってもんだろ?流れで?何言ってんだアンタ?自分の状況分かってんのか?」
自分でも驚くほど熱が入る…
マッド
「分かっておる…」
ガリバー
「いいか?誰かに迷惑かけたら謝るのは社会人として当たり前の行動だよな?一回で許してもらえると思うな?何回も行くんだよ!生徒の父親にでも、母親にでも、そして生徒自身にも。」
マッド
「そこまでしなきゃいけないのかの?」
ガリバー
「当たり前だろ!あと怪我させた生徒だけじゃないぞ!今回の事件でアンタが迷惑かけた人全員に謝りにいかなければいけないはずだろ?不貞腐れて家で実験なんてしてる暇ねぇだろ?」
マッド
「…………。」
デブネル
「ガリバー、ちょっと落ち着いて。ガリバーの言ってることは正しいよ。だけどこのおじさんにそんなことできるとおもう?できていたら、こんなところには来てないはずだよ。」
ガリバー
「できるさ、マッドは変わろうとしている!」
ミヤビ
「先生、できそう?迷惑かけた人みんなに謝罪なんて…。プライドが壊れてしまうのではないかしら?」
インファ
「むりは…しないで…」
マッドは天を仰ぎ見たあと、何かを決心したように深く息を吸った。
マッド
「みんなの言うとおりじゃ。ワシは確かにプライドが高いのかもしれぬ。今のいままで謝るとすら頭になかったぐらいじゃ。でもこんな若造に言われてしまってはの!できないと言う方が恥ずかしいじゃろい!」
デブネル
「お!いいねぇ!よっ、がんばれマッド先生!」
インファ
「…ファイト…です…」
ミヤビ
「頑張って!先生!」
ガリバー
「目上なのに強い言葉を使っちまって悪かった。でもあんなにはこのまま終わってほしくない。できる限りでいいからやってみてくれ。」
マッド
「熱い青年よ!ありがとう!大志を抱け!」
ガリバー
「うまくまとめようとしてんじゃねえ。」
デブネル
「でもほんとガリバー熱いよ。暑すぎるぐらいだよね。」
ミヤビ
「そんなことないわよ?」
(本当暑苦しいけど嫌いじゃないわ!)
インファ
「かっこよかったよ…」
ガリバー
「みんなありがとう。つい熱くなっちまった。」
そのとき、ドザえもんのアナウンスが…
「そろそろ次の駅に到着します。お降りの方はご準備ください。」
マッド
「どうやら、次はワシが降りる番のようじゃ。みんな本当に熱い心を持ったよい青年たちじゃ。将来立派になるじゃろう。短い間じゃったが、本当にありがとうのぉ!皆に会えて本当によかった。マッド先生も頑張ってみるからのぉ。見守っていてほしいのぅ」
ガリバー
「ああ、またな!少し科学に興味が出てきたぜ!」
デブネル
「僕も!気になってきたよ」
ミヤビ
「ありがとうございました!」
インファ
「さ…さみしいですね…」
次の駅につき、
少し晴れやかな顔をしたマッドが降りていった。無事帰れるのだろうか?マッドも、そして俺たちも…


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