『かぐやは月には帰れない』第4話 シャトル乗り場にて

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第4話 シャトル乗り場

翌朝、家を出ようとしたら、

母が台所で月石をカンカン叩いていた。

「あら、もう行くのね。」

かぐや

「…うん、お母さん…今まで…ありがとう…。」

「ええ、地球で恥かかないように、

月の民としての最低限の美しさは保ちなさいよ」

かぐや

「……最低限…」

「あと、ユキのことは大丈夫よ。

あの子はちゃんと月の美しさを持ってるし。」

かぐや

「……そう…だね。」

「達者でね。」

かぐや

「うん…。」

外に出ると、妹のユキが立っていた。

ユキ

「……お姉ちゃん」

かぐや

「…ユキ…」

ユキ

「…もう、行っちゃうの?」

かぐや

「だらだらしててもしょうがない。

挨拶する人もいないし。」

妹は袖を掴んだまま、

しばらく何も言わなかった。

ユキ

「……やだ」

かぐや

「…ここにはもういられない。」

ユキ

「お姉ちゃん、かわいいからきっと大丈夫だよ…。

地球の人も…絶対…優しくしてくれるよ

…。」

かぐや

「……ありがとう」

ユキ

「早く帰ってきてね。」

かぐや

「できたらね…。」

シャトル乗り場に着いたとき、

私は覚悟していた。

(どうせ誰も来ない)

月の人は、私を見るとサッと距離を取る。

いつものことだ。

係員

「かぐや様、まもなく搭乗です」

かぐや

「……はい」

そのときだった。

「かぐや!!」

振り向く前に、胸が熱くなった。

声でわかった。

ケンヂだった。

息を切らしながら走ってきて、

私の前で止まる。

ケンヂ

「……間に合った」

かぐや

「……なんで来たのよ」

ケンヂ

「来るに決まってるだろ!

なんで言わずに行っちまおうとするんだよ!」

かぐや

「別れの挨拶のなんて意味のないことだからよ。愛されてたならこんな結果にはならなかったもの。」

ケンヂ

「そんなこと言うな!俺は間に合わなかったら一生後悔してた!」

かぐや

「一生ね…。

また会おうでいいじゃない。」

ケンヂ

「また会えるのか?」

かぐや

「さぁ?わからないわ…私には…」

必死に冷静さを保とうとするが、どんどん胸が痛くなる…

ユキも後ろにいた。

目が赤い。

ユキ

「……お姉ちゃん」

かぐや

「ユキ……」

ユキは唇を噛んで、

でも笑おうとしていた。

ユキ

「……気をつけてね。

お姉ちゃんなら大丈夫…だよね?」

かぐや

「…たぶんね。」

根拠はない

ケンヂが一歩近づく。

ケンヂ

「かぐや。

必ず帰ってこいよ。

帰ってきたら……」

言いかけて、言葉が詰まる。

かぐや

「帰ってこいじゃねーよ、ばーか!」

ケンヂ

「……は?」

かぐや

「私に会いたいなら、お前が来い!

ユキとの新婚旅行にでもな!」

ケンヂ

「……っ」

ユキが泣き出した。

ユキ

「お姉ちゃん……そんな言い方…、

そんな言い方したら…、

余計…っ……!」

かぐや

「泣くなよ…

そんなつもりじゃ…」

声が震える。

でも、もう振り向かない。

泣いてるのがバレるから。

ケンヂ

「…かぐや…!」

かぐや

「……なんだよ?」

ケンヂ

「絶対に迎えに行くからな!

どんな手使ってでも行くから!

お前がどこにいても、絶対に!」

かぐや

「無理すんな。

お前はユキを幸せにしてやれ」

私は後ろを向いたまま、

右手だけを上げた。

かぐや

「……じゃあね」

歩き出す。

足が震える。

シャトルの扉の前で、

一瞬だけ振り返った。

ケンヂとユキが泣いていた。

私も泣いていた。

かぐや

「……ありがとう。」

扉が閉まる。

その瞬間、

胸の奥がぎゅっと締め付けられた。

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