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✨【第2章・前半】王にたどり着くまでの攻防
王都に着いた俺は、まず深呼吸した。
「よし、今日は“行商人のメロス”として生きる」
本当はただの村人だけど、
王様に会うには肩書きが必要だ。
勢いだけで来た旅にしては、珍しく頭を使っている。
荷物袋には地元の酒を一本だけ入れてきた。
これを「献上品」と言い張る作戦だ。
王宮の門に近づくと、門番が鋭い目で俺を見た。
完全に“怪しいやつチェック”の目。
「何者だ」
俺はすぐに腰を低くした。
「し、下々の者でございます。
地元の名酒を王に献上しとうございまして…」
門番は眉をひそめた。
「献上?お前みたいな身なりで?」
いや、言い方よ。
でもここで引いたら終わりだ。
俺は必死に笑顔を作った。
「いえいえ、見た目はアレですが、
この酒は本物でございます。
王様の喉を潤すためだけに作られた逸品で…」
門番はため息をついた。
「まあいい。
ただし変な真似をしたら即刻斬る」
怖すぎる。
でもなんとか門を通してもらえた。
俺は心の中でガッツポーズした。
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王宮の中は広すぎて、もはや迷路だった。
案内役の兵士に連れられ、ようやく玉座の間に着く。
王様は玉座に座っていた。
その顔は“人間不信のプロフェッショナル”。
眉間のシワが深すぎて、もはや地層。
俺はすぐにひざまずいた。
「王よ、遠方より参りました行商人メロスと申します。
本日は献上品をお持ちいたしました」
王様は冷たい目で俺を見た。
「人間など信用できぬ。
お前もどうせ裏切るのだろう」
いや、初手それ?
でもここで反論したら死ぬ。
俺は全力でゴマをすった。
「いえいえ、王のお言葉、まことにごもっとも。
人間は裏切り、嘘をつき、欲にまみれ…
まさに王のおっしゃる通りでございます!」
王様は少しだけ満足そうにうなずいた。
よし、いける。
俺はさらに続けた。
「ただ…その…
中には、王のように真実を見抜くお方もおりまして…
そういう方にこそ、この酒を…」
王様の眉がピクッと動いた。
「ほう。
ではお前は、人を信じるべきだと言いたいのか?」
あ、やばい。
地雷踏んだ。
俺は慌てて取り繕った。
「い、いえ!
信じるべきとは申しません!
ただ、王のような方なら…その…
信じても裏切られない人を見抜けるのではと…」
王様は立ち上がった。
「試してみよう」
試すんかい。
「お前が本当に戻るなら、私は人を信じてみる。
戻らぬなら、お前の友を処刑する」
いや、なんでそうなる?
でももう遅い。
俺は勢いでうなずいてしまった。
こうして俺は、
“ゴマすりに失敗して試練を背負わされた男”
として歴史に刻まれることになった。
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